NEW HERO

　三田啓貴がゲームスタート時にポジションを取るのは、中盤の後方だ。だからといって彼は90分間そこに落ち着くわけではない。彼はチーム全体を前に進める役割も担っている。

　プロ入り後は、前方のポジションでプレーすることが多かった三田だが、2016年に仙台へ期限付き移籍で加わってからは、ボランチが主戦場となった。富田晋伍とのコンビは、バランスを取りながらも個々の武器を生かせる関係性を築き、チームを中盤から支えることとなった。

　左足から繰り出すパスやシュート、自らボールを長い距離に渡って運ぶドリブルなど、三田には攻撃的な武器が多い。しかし自己最多のシーズン4得点を記録した昨シーズン終了後にも「ボランチとしてはバランスを取ることが第一なので、ゴール数はそんなに重要ではなかった。でも、試合経験を重ねて、このポジションで成長できていることが大きい」と語った。時に攻撃で、そして時に前へ出てボールを奪う守備で活躍。そしてオフに完全移籍を選択し、今季は仙台でさらに存在感を大きなものとしている。

　覚悟を決めて、杜の都でプレーする三田は、開幕からフルパワーで活躍中だ。開幕戦となった明治安田生命J1リーグ第1節・札幌戦では守備を固める相手に対して、何度もチームの攻撃を厚くする役割を果たし、終盤には彼のミドルシュートが呼び水となって石原の決勝点が生まれた。また、「今季はアシストも増やしたい」と開幕前に話していた通り、セットプレーでも流れの中でも、精度の高いキックからアシストを記録している。第8節・広島戦では、プロになって初めて、直接フリーキックからゴールを記録した。

　前半戦が終わろうとするこの時期にも「ここで上位を相手に勝つことで、自分たちはもっと上に行けます。怯むことなく、目の前の相手との一対一に勝つため、もっと個人の力も高めていきたい」と言葉に力を込める。そのランニングにも、キックにも、三田は闘志をみなぎらせて試合にのぞむ。