NEW HERO

　「このスタジアムはすごく思い出に残っていますし、J1のスタートを切れたスタジアムだったので、そこでゴールを決められたのは良かった」。

　明治安田生命J1リーグ第12節・横浜FM戦を終え、大岩一貴は自身のゴールについて振り返った。

　本人の言葉にあるように、その一年以上前に、大岩は同じ日産スタジアムでJ1デビューを飾った。J2の千葉から仙台に加入した2016年のJ1・1stステージ第1節のこと。大岩は開幕前のキャンプでは「チームに慣れるのに精一杯で、いつ出られるかは想像もつかなかった」と話していたが、この大事な開幕戦で先発出場の機会が巡ってきた。緊張する暇も、感慨に浸る暇もなかったという。「ここでやるべきことをやらなければ、この先J1での出番はつかめないと思った」と覚悟を決め、大岩はピッチに立った。そしてこの試合で、右サイドバックとして無失点勝利に貢献。「自信になったかどうかは正直なところ分からないのですが、いいスタートを切れたと思います」という感触を得た。

　それから、現在に至るまでの活躍は、サポーターの方もご存知のとおり。昨季は右サイドバックとセンターバックのポジションで主力としてプレーし、リーグ戦では出場停止の1試合を除く33試合のピッチに立った。J1での初ゴールも記録した。「常に目の前の相手に負けないこと」という信条のもと披露する対人守備の強さはもちろん、広範囲をカバーする走力、最後まで足を止めない姿勢などでチームを支え続けている。

　今季は、3バックの一角として活躍。リーグ戦もカップ戦もフル稼働だが、「試合が多い方がリズムがつかめます」とタフなところを見せる。冒頭に挙げた横浜FM戦では対面する相手のドリブラーの突進を食い止め、1点を追う展開のなかで三田のコーナーキックに頭で合わせて同点ゴールを決めた。大活躍の一戦にも、引き分けに終わったことで「いい感じで（プレー）できていたからこそ1点を取られてはだめだと思いましたし、前半のうちに1点を取らなければだめ」と悔しさを隠さなかった。この向上心のもとで、大岩はさらに磨かれ続ける。最終ラインの鉄人は、その守備も意志も強固だ。