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タイの子どもたちにベガルタ仙台を届けよう!with 大久保剛志(YUKI FOOTBALL ACADEMY)&バーンデック財団(Baan Dek Foundation)レポート

掲載日:2022年12月30日

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サッカークラブならではのSDGsとして

2022年7月8日、ホームゲーム ヴァンフォーレ甲府戦。
SDGsの取組みの一環として、タイのスラムや建設現場のキャンプで暮らす社会的に弱い立場の子どもたちに、使用しなくなったベガルタ仙台グッズをサポーターのみなさまに寄付いただき、お届けするためのブースから、本イベントはスタートしました。
【7/6 J2 甲府戦】ユアスタにご持参ください!タイの子どもたちに使わなくなったベガルタTシャツなどをプレゼントしよう!

集まったグッズは海を渡り、タイへ

試合当日は、328名と多くのサポーターの方々に賛同いただき、1,655点を寄付いただきました。その後グッズは11月にタイに事前に送付。受け皿と現地のコーディネートは当クラブOBの大久保剛志(以下、大久保選手)が運営するYUKI FOOTBALL ACADEMY(以下、YUKI)と、タイで活動をしているバーンデック財団(Baan Dek Foundation)(以下、BDF)に担っていただきました。
YUKIは、大久保選手が代表を務めるバンコクのサッカークラブで、来年4月に宮城県仙南地域にも開校することが決まっており、宮城とタイを繋ぐ架け橋となっています。
BDFは、ユニセフなどが支援しているタイの財団。子どもたちに教育・健康・安全を提供する活動をしています。

現地で知る実情

当クラブでは、事前に送ったグッズを追いかけるように12月に地域連携課スタッフの菅井直樹を含め3名がタイに向かいました。
日本からまずはバンコクへ。大久保選手が所属するタイ3部リーグバンコクFCのオーナー、ポンタット・アマタビバタナ氏(以下、ポール氏)と会談する機会をいただきました。ポール氏はタイでハウスメーカーやペーパー(紙類)の商社を経営するビジネスマンでもあり、本事業に大きな共感をいただき、応援することを約束していただき、わずかな滞在と会談の時間でしたが、未来に向けて大きな収穫を得ることができました。

その後空路チェンマイに移動し、BDFからタイのスラムの現状についてプレゼンがありました。タイ国内には、53のスラムがあり、60,000人の子どもたちが工事現場などで働き、いわゆる児童就労が問題視されており、このことはあまり日本では知られていません。
就労する子どもは、ほとんどが国籍を持たず、陸続きで国境が面するカンボジア、ラオス、ミャンマーなどの内戦などを逃れてくる難民の子だそうです。国籍がないため不法滞在、学校にも行けず、就労して生きていくしか道がなく、根の深い問題になっています。
また、タイの法律で、パブリックスクールであれば誰もが通えるサポート体制も整っていますが、スラムの子はタイ語ができない、必要なワクチン接種を受けていないなどの理由でやはり就学できていない子がほとんどだということです。
こういった環境から、ネグレクト、DV,親のアルコール依存症、派生した子どもによる育児、10代での妊娠など、目を覆いたくなる実情も多発しています。生活環境は劣悪であり、トイレほどの狭い所に家族全員が住んでいることも少なくないといいます。息も詰まるような空間に長く滞在すれば、それがストレスとなり、前述のような問題が起きたり、逆に無気力にさいなまれることも多くなります。
この現状を変え、同国内のギャップを埋めるためのサポートをしているのがBDFで、具体的に3つの方法でサポートを行なっています。
1 SUPPORT
スラムの現場で直接物品などを提供するプログラムから、食事の前に手を洗う、寝る前に歯を磨くことなど、人としての生き方を知らない子どもたちの知識もサポート。
2 EMPOWER
手に職をつける。裁縫などを教え、土産品などを作るノウハウを提供し、自立を促す。
3 CHANGE
建設会社、工事現場などに直接アプローチし、雇う側からも児童就労を防ぐ。

その他、さまざまチャリティプログラムを保有しているが、ヨーロッパサッカー連盟(以下、UEFA)から資金援助を受けて行う、foot ball 4 goodというサッカープログラムもありました。主に放課後、コミュニティ単位で週に1回サッカーを学ぶ、教えるプログラムだが、UEFAの資金援助が22年で終了します。当クラブの本取り組みにもサッカー教室を含んでおり、BDFが望んでいる活動でもあることから、非常に好意的、熱量を持って迎え入れていただいたと感じました。

サッカーの力と可能性

プレゼン後、グッズのプレゼントとサッカー教室のためスラムへ。事前に聞いたさまざまな課題を実際に目と耳、肌で感じ取り、改めて何ができるのか、ベガルタ仙台ができる精一杯を出し切ろうという思いが強くなる時間となりました。

サッカー教室は、5つのスラムコミュニティから63名の子どもが参加。本教室の目的は大きく3つとしました。
1 子どもたちにスポーツができる環境を届けること
2 中学生などにスキルを教えて、その子がより小さい子に教えることができること
3 ソーシャルスキル、コミュニケーションの取り方を身につけ、男女区別なく楽しむこと
クラブスタッフ一同は事前のプレゼン、現地で目の当たりにした光景からどのように臨めばいいのかと慎重になっていましたが、会場に着いた瞬間にその思いは吹き飛びました。子どもたちは、全員ベガルタゴールドを身に纏(まと)い、笑顔で大歓迎してくれたからです。
サッカーが始まれば、そこにあるのはいつもと同じ無邪気な笑顔と真剣にボールを追う姿でした。タイの子どもたちが揃ってベガルタゴールドを身に着けている姿にサポーターの思いが子どもたちに届き、結実したと感じ、大きな感動を覚えました。
サッカー教室に参加した子どもたちは民族や言葉もバラバラでしたが、サッカーには関係がないことを実感。また、スポーツが楽しめる!ただそれだけが、とても重要なことでした。
身近に面倒を見てくれる大人をほとんど知らない子どもたちにとって、向き合ってくれるる大人、コーチがいるだけで幸せなひと時だという。教えるより、教わることが多く、改めて課題も感じるサッカー教室でした。

おわりに

ベガルタ仙台は、 SDGsの基本方針の中で「みなさまのハブとなり、パートナーシップで地域課題の解決に取り組み、地域とともに未来を創る活動に全力を」と謳っています。
宮城、仙台が軸となりますが、可能性はホームタウンに留まらず、アジア、世界へと通じていきます。
地域問わず、課題を顕在化させ、発信し主体的に解決に取り組む。これが地域に生かされたJクラブの存在意義であることを忘れてはならないと強く感じることになりました。

最後に、本取組みに共感し、運搬や関税など慣れない海外輸出に関する全てをコーディネートいただいたKEN TRADINGの山田社長、スポンサーとしてご支援いただいた塩釜の阿部会計事務所の阿部代表、ボランティアコーチとして参加してくれたベガルタ仙台ユースOBで細川興業の細川社長、バンコクFCオーナーのポール氏、YUKI FOOTBALL ACADEMYのみなさま、財団側のコーディネートと通訳に奔走していただいたケイン明子さまとBDFのみなさま、トータルコーディネートしてくれたクラブOB大久保剛志。
何よりも、本取組みに多くの善意を寄せていただいた誇り高き、ベガルタ仙台サポ―ターのみなさまに最大限の感謝を申し上げます。
コップンカー!(タイ語でありがとうございました)